うなぎ料理は種類が豊富
うなぎ料理の王様は蒲焼
【蒲焼】
うなぎを開いて頭と骨を取り除き、身に串を打ってタレをつけて焼き上げます。総務省の統計では、やはり7月の土用の丑の日が年間でもっともウナギの蒲焼に対する支出が大きく、土用のうなぎと言えば蒲焼というイメージが強く根付いていることがあらわれています。
【白焼き】
タレなどの調味料をつけずにうなぎの身を素焼きにしたもの。わさびや大根おろし、しょうが醤油などをつけて食べます。天ぷらやパスタなどにもアレンジできます。
【うなぎ丼・うな重】
別々の名前がついていますが、実はどちらもご飯の上に蒲焼を乗せたもの。器が丼か重箱かの違いでしかありません。店や地域によってはうな重はうなぎが重なった状態を意味するとして、ご飯と蒲焼を二層に盛っているところもあります。
【肝吸い】
うなぎの内臓部分の吸い物。澄まし汁仕立てが主流です。
関東と関西で違う、うなぎ
【うざく】
ウナギの蒲焼の切り身に塩もみきゅうり、みょうがなどを加えた酢の物
【う巻き】
好みでうなぎの白焼きまたは蒲焼を芯にして作るだし巻きたまご焼き。
【せいろ蒸し】
福岡県柳川地方を中心とした九州北部の郷土料理です。うなぎの蒲焼とタレの旨味をご飯にしみ込ませるようにせいろで蒸し上げます。
【ひつまぶし】
愛知県の郷土料理で、名古屋めしの代表格。細切りにした蒲焼がおひつに盛られて出てきます。最初はそのまま食べ、次はネギ、わさび、海苔などの薬味で食べ、最後は薬味入りのうなぎご飯にお茶またはだし汁をかけ、お茶漬けスタイルで食べるのが基本です。
【うなぎのパイ】
「うなぎパイ」といえば、静岡県の名物・春華堂のお菓子が有名ですが、実はイギリスの郷土料理にもうなぎのパイがあります。ぶつ切りにしたうなぎを入れて焼いたパイにマッシュポテトを添えた料理で、通称「パイ・アンド・マッシュ」。フィッシュ・アンド・チップスと並ぶ庶民の味として親しまれています。
【うなぎのゼリー寄せ】
こちらもイギリスの下町の郷土料理です。よく煮込んだうなぎ入りスープをゼラチンで固め、辛味の効いたチリビネガーをかけて食べます。イタリアにもよく似た料理があり、フランスやドイツでも同じような料理のレシピが伝わっています。
関西では「まむし」と呼ばれるウナギ
大阪で「まむしを食べに行きましょう」と言われてドキッとした経験、ありませんか?
毒ヘビのマムシを食べる…?いえいえ、実は関西地方ではウナギご飯のことを「まむし」と言うんです。
現在では大阪でも東京のうな丼のようにご飯の上に蒲焼が乗っているものが多くなりましたが、ご飯の中に蒲焼がはさまれているのが本来の「まむし」の姿です。
ウナギをご飯で蒸して脂を抜く「真蒸し」、蒲焼にご飯がまぶされているからなど、呼び名の由来には諸説あります。
背開きの関東、腹割りの関西
同じウナギでも関東と関西ではいろいろな文化の違いがあります。
もっとも大きな違いは、開き方。商人の町・大阪ではウナギは腹開きにするのが伝統です。これには「腹を割って話す」という意味も込められていました。ところがこの文化は武士の町・江戸では「切腹を連想させる」として嫌われ、背開きするようになったと言われています。
型を重んじる江戸と実利を重視する大阪の文化の差がよくあらわれていますね。背開きよりも腹開きのほうが包丁が入れやすいので、大阪の方が効率的。一方江戸では「ウナギをせかすのは野暮」と言われ、新香でつないでゆっくり待つのが粋とされていました。
実際には、大きくて太っている江戸前のウナギは腹開きでは身が崩れやすいため、背開きになったというのが本当のようです。
調理方法にも違いがあり、関東ではウナギをタレの中につけますが、関西はひしゃくでタレをウナギにかけます。関東は串を打つ前に頭を落として捨ててしまいますが、関西はタレをかけてから頭を落とし、「半助(はんすけ」という惣菜にしています。
また、関東は白焼きにしてから蒸しをきかせ、ふっくらとした食感を味わうのが主流。それに対して関西は、脂ののりや歯ごたえを楽しむために直焼きするのが一般的です。見た目は似ていても、西と東では味わいや食感、文化に至るまで大きな違いがあるのです。